世界にたった1つだけ!『murray space shoe』で手に入れた自分の足を包み込む革靴との出会い

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その人の暮らしに合わせて、世界に1つだけ、自分のためだけの革靴を作ってくださる靴工房がアメリカにあります。

それが、サンフランシスコから遠く離れた、グインダという小さな村にある『マレースペースシューズ』です。

「雲の上を歩いているような履き心地」といわれる靴を求めて、世界中の人が訪れています。

今回は、実際にマレースペースシューズを訪ねた僕が、自分の足に合う靴を作ってもらった時の想い出をみなさんにお届けします。

マレースペースシューズについて

マレースペースシューズ(murray space shoe)の生まれは、1945年にまでさかのぼります。

当時アイススケート選手だったアラン・マレー氏が、自分の足のケガをきっかけに独自開発した靴の製造方法をもとに、夫人と一緒にサンフランシスコで靴工房を営み始めたのがきっかけです。

もともとは、足の障害やケガを抱えている方向けに作られていましたが、その後一般の方もオーダーできるようになりました。

そして数十年の月日が流れてマレー夫妻が高齢になり、当時の顧客の一人でもあったマリー・ダーマーさんが技術を継承し、移り住んでいたグインダ村で息子のフランクリンさんと一緒に靴作りを始めました。

現在、マリーさんは残念ながら亡くなられましたが、息子のフランクリンさんが工房を引き継ぎ、世界中から訪れる方々の靴を作り続けています。

ちなみに、space の意味は「宇宙」ではなく、足を包み込む靴の中の「空間」を意味しているそうです。

僕がマレースペースシューズを知ったきっかけ

僕がマレースペースシューズを知ったのは、松浦弥太郎さんの著書『日々の100』と『場所はいつも旅先だった』という2冊の本がきっかけです。

本のなかには、マレースペースシューズのこと、松浦さんが経験したマリーさんとフランクリンさんとの想い出などが綴られています。

僕は靴のサイズが31cmと非常に大きく、それまでサイズに合わせて履ける靴に出会ったことがありませんでした。

そんななかでマレースペースシューズのことを本で見つけ、その歩きやすさや履き心地の良さ、なにより自分の足にピッタリ合う靴の魅力を知りたくなりました。

当時大学4年生で就職活動を終えた僕は、「サンフランシスコのマレースペースシューズに行く!」という目標を立ててお金を貯め始めました。

そして2017年の3月にマレースペースシューズを訪ね、フランクリンさんに足の隅々までを採寸していただき、完成した自分のためだけに作られた革靴を今も大切に履いています。

マレースペースシューズのオーダーの流れ

マレースペースシューズで革靴をオーダーする流れをご紹介します。

まずは電話か手紙から始まる

マレースペースで靴をオーダーするには、まず電話をかけるか手紙を送らなければなりません。

その理由はフランクリンさん曰く、「人とのつながりを大事にしているので、まずはその人のことを知りたい」からだそうです。

ホームページに掲載されていた電話番号を頼りに、僕は生まれて初めて国際電話を利用しました。

国際電話は普段の呼び出し音とは違い、「ザーッ……ザザーッ……」というノイズが続いた後、電話に相手が出ると音声に突然切り替わります。

僕も突然聞こえた「ハロー」というフランクリンさんの声に戸惑いながらも、拙い英語で靴を作ってほしいことを伝え、フランクリンさんからは「訪ねたい日や希望する靴の形などを書いた手紙を送ってほしい」とのことで、電話を切った後にすぐ書き、国際郵便でフランクリンさんに向けて手紙を送りました。

フランクリンさんから手紙が届く

手紙を出してから約2週間後、英語が書かれた封筒がポストに入っていて、ひと目でフランクリンさんからの手紙だと分かりました。

そこには手紙を書いてくれたことのお礼や靴の見積もり、今後のやり取りをするメールアドレスが書かれていて、工房までの道順を示した大まかな地図が入っています。

マレースペースシューズのフランクリンさんから届いた手紙の写真

フランクリンさんから届いた手紙

飛行機から見えた夜明けを撮影した写真

飛行機から見えた夜明けの世界

お金の準備や飛行機のチケットなど、マレースペースに行く準備が整った僕は、いよいよサンフランシスコに向けて日本を旅立ちました。

フランクリンさんの元を訪ねる

マレースペースシューズがあるグインダ村は、サンフランシスコの中心から100マイル(約160km)離れた場所にあり、車で2時間以上かかります。

電車やバス、タクシーなどを使って行くことはできません。

そこで、日本で国際免許を取得した後、国内の旅行サイトを通じて現地で借りるレンタカーを手配して、自分で運転して行くというのが最も現実的な手段です。

サンフランシスコでレンタルした車の写真

乗り心地も良く快適

僕が借りたアメリカ・フォード社のレンタカーは、カーナビで予約していたはずがなぜか付いておらず、海外用のポケットWi-Fiもレンタルしていなかったので、事前にグーグルマップでスクショしていた経路とフランクリンさんの地図を使ってなんとかたどり着くことができました。

アメリカの高速道路を撮影した写真

真っ直ぐに続く道

往復で400キロ近い道のりでしたが、やはりアメリカは道がとても広い。

高速道路はずっと一本道なのでとても運転しやすく、車の燃料タンクも大きいからか約半分の燃料を残して往復できました。

マレースペースシューズへ行くまでに撮影した風景の写真

マレースペースシューズへ行くまでに撮影した写真

マレースペースシューズへ行くまでに撮影した写真

山と緑だけのどかな風景が続く

高速道路を降り、のどかな風景が続く道を進むと、グインダ村にたどり着きます。

工房の中で靴について一緒に話し合う

工房があるガレージの手前に車を停めると、フランクリンさんが笑顔で出迎えてくださいました。

一緒にガレージの中へ入ると、そこには足の石膏が入った袋がたくさんあり、いかに多くの方が世界中からマレースペースシューズを訪れているかを知ることができました。

工房に置かれた靴のサンプルの写真

靴のサンプルをもとにカウンセリング

工房には、靴のモデルやサンプルがいくつもあり、どんな靴を作るかを一緒に話し合います。

僕は東京に住むことが決まっていたので、アスファルトの舗装にも耐えられるように、底を厚めにすることを提案してくださいました。

そして、革のサンプルをいろいろ見比べながら、僕は焦げ茶色でモカシンというスタンダードなモデルで作ってもらうことに決めました。

足の採寸と石膏による型取り

靴に関することを決めた後は、いよいよ採寸と型取りです。

王座と呼ばれている椅子に座り、メジャーを持ったフランクリンさんが僕の足を丁寧に採寸し、紙にペンでそのデータを書いています。

足を採寸するために座る椅子の写真

王座に腰かけていよいよ採寸

僕はずっと合わないサイズの靴しか履けなかった結果、外反母趾や足のタコ、関節を真っ直ぐに伸ばしきれないなどの問題があったみたいです。

足の採寸を終えたフランクリンさんは僕の目を見て、「今まで辛かっただろう。でも、僕に任せてくれれば大丈夫だからね」と、優しい言葉をかけてくださいました。

そして石膏で足を包み込み、固まるのを待ちます。

この間にも、自分のことやフランクリンさんのこと、そしてここに来るきっかけをくれた松浦さんの本のことなど、いろんなことを一緒に話しながら時間を過ごしました。

型取り後の石膏の写真

石膏を上から撮影した写真

石膏で型取りした僕の足

固まった石膏を足から外して、靴作りの土台となる型取りが終わりました。

これをもとに製作を行い、約1か月後にできあがった靴が届きます。

お支払い

お支払いは現金のみで、僕は現地でフランクリンさんに直接手渡しました。

そのため、僕は日本で円からドルに両替し、現地のATMを利用して下ろしたお金と合わせて持っていく必要があり、大量のドル札が財布に収まっているという事態に。。

日本とは雰囲気が違う海外で、旅行中にスリの被害に合わないかずっとヒヤヒヤでした。

※国際送金も可能だったかもしれません。5年以上前のことなので、記憶から漏れてます…汗

僕のもとへ届いた世界に1つだけの革靴

マレースペースシューズを訪れてから約3週間ほど経ったある日、「思っていたよりも早くできたので、君に向けて送りました」とフランクリンさんからメールが。

そして、約束の1か月後よりも少し早く、完成した靴が僕のもとへ届きました。

フランクリンさんから送られた靴が入っていた箱の写真

ロストバゲージすることなく無事に

マレースペースシューズで作ったオーダーメイドの革靴

フランクリンさんが作ってくれた革靴

急いで箱を開けて中から取り出すと、そこにはフランクリンさんが作ってくれた、マレースペースシューズの革靴が入っていました。

靴の内側には僕の名前が書いてあり、どこからどう見ても他に同じものはない、世界に1つだけの自分の靴です。

部屋の中でしたが、靴に足を入れてみると、足裏のカーブも自分の足の形に合わせられていました。

そして椅子から立ち上がると、足全体が優しく包まれるかのようにピッタリと靴と足がフィットします。

少しだけ歩いてみると、そのフィット感は変わらず、安心感と幸福感に包まれました。

それからの僕は、東京での新たな生活をスタートし、東京のいろんな街をフランクリンさんの靴を履きながら探検するようになり、現在も大切に履いています。

現在の僕の靴

マレースペースシューズの靴工房を訪ね、フランクリンさんに靴を作ってもらってから、現在で3年が経ちました。

定期的に靴を磨き、クリームやオイルによるメンテナンスに取り組んでいるうちに、独特の風合いが出てきたような気がします。

マレースペースシューズのフランクリンさんが作る革靴の写真

僕の大切な相棒

しかし、履いているうちに、かかとがどうしても擦り減ってきます。

フランクリンさんの靴は特殊な製法で作られているので、近くの靴の修理屋さんに持ち込むことはできません。

近々連絡を取り、フランクリンさんのもとへと送り、大切な相棒のメンテナンスをしてもらおうと思っています。

このように、自分の足を支える大切な存在として、長く付き合える相棒のような愛着感が湧くのも、マレースペースシューズならではのことかもしれません。

まとめ

サンフランシスコから離れたグインダ村にある、マレースペースシューズでの想い出をお届けいたしました。

実際に訪れた人のみが体感できる履き心地、そしてフランクリンさんの温かさ。

僕のもとに届いた靴が入っていた箱には、実はフランクリンさんからのお手紙が入っていました。

そこには、「この靴はきっと君の新しい友だちになってくれるはず」と書かれていました。

その言葉に偽りはなく、今の僕にとってなくてはならない大切な存在です。

マレースペースシューズやフランクリンさんは、靴を通じて未熟な僕に、今まで知らなかった考え方や生き方を教えてくださったのでした。

僕にきっかけをくれた松浦弥太郎さんの本をご紹介

松浦さんの本でマレースペースシューズのことが書いてあり、僕が繰り返し読んでいた本をご紹介します。

ぜひチェックしてみてください!

日々の100

『日々の100』は、松浦さんの身の回りにある、100のモノについて想い出が綴られている作品です。

フランクリンさんの靴以外にも、国内外のさまざまなモノたちが紹介されています。

続編である、『続・日々の100』にも、山登り用に作られたタイプの靴が載っています。

場所はいつも旅先だった

『場所はいつも旅先だった』は、サンフランシスコやニューヨークなど、アメリカのいろんな場所で若かりし頃の松浦さんが経験した出来事や出会いについて綴られている作品です。

現地の人との触れ合いがイキイキと描かれており、思わず自分もそこにいて旅をしているかのような感覚になります。

くちぶえサンドイッチ

『くちぶえサンドイッチ』には、松浦さんがマレースペースシューズを知った経緯や、初めて訪れた時の話が描かれています。

他の随筆は、どれも文章がみずみずしく、心がスッと軽くなるかのような温かさに満ちた作品です。

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