春の訪れを告げた haruka nakamura の「スティルライフ」の続編となる「スティルライフⅡ」が秋も深まった季節にリリースされました。
自宅で録音されたミュートピアノによる15の曲は、暮らしのなかから生まれ、日常に優しく寄り添ってくれるかのようです。
多くのファンが待ち望んだ今作「スティルライフⅡ」の魅力をお届けします。
目次
スティルライフⅡについて
スティルライフⅡは、2020年11月にリリースされた、音楽家 haruka nakamura によるアルバムです。
同年4月にリリースされたスティルライフの続編となったのが今作。
ミュートピアノ特有の音の響きや、鍵盤やペダルから鳴る音、あらゆる音が自然に調和し、日常に寄り添った作品になっています。
紡がれた15曲の数々は、静謐さの中から広がる音の余韻が前作に比べて増し、秋や冬の装いを感じさせてくれるかのようです。
写真だと見にくいのですが、アルバムジャケットの表面は、ポラロイドカメラで撮影された前作の祖父の静物画を線画したもの。
裏面はスティルライフ製作日誌で写し残された写真が取り入れられています。
リリースは自主レーベルの灯台から。
アルバムジャケットの質感はもちろん、曲順や曲間、マスタリングなどの細部にまでこだわり抜かれ、唯一無二の作品に仕上がっています。
スティルライフⅡの魅力
前作に続いて、今作も自分の近くに置いて、ずっと聴いていたいと思う作品でした。
アルバムに隠された魅力をひもといていきます。
季節や日常を感じさせてくれる曲の数々
前作に比べると曲の多くがスローテンポになった印象がある分、一つひとつの音の響きがさらに残り、余韻の長さと静謐さが増した印象があります。
1曲目の「光の午後」に始まり、ラストを飾る15曲目の「街の灯」に至るまで、その曲名や曲調が秋と冬の季節、自分が住む街に流れる時間を優しく彩るかのように思えました。
時間帯やシチュエーションを問わず、あらゆるシーンに寄り添ってくれるミュートピアノの優しい音。
15曲53分の時間があっという間に過ぎるほど、日々の暮らしにスッと溶け込んでくる不思議さがあります。
「その後のスティルライフ日誌」に感じるつながり
前作のスティルライフに関しては、「スティルライフ・制作日誌」として、その制作の日々の様子がオフィシャルサイト内で綴られていました。
今作では、「その後のスティルライフ日誌」という小冊子がアルバムに収められています。
6つにまとめられた日誌は、スティルライフやスティルライフⅡが、どのような過程を経て生まれてきたのかに関するメッセージが記されています。
特に最後の「彼方からの手紙」という、幼なじみからの手紙ともいえるメールの内容を読むと、その情景が思わず目に浮かぶような鮮明さと温もりを感じられます。
綴られている内容のすべてが結びつき、この2枚のアルバムが必然的に生まれてきたように思わせてくれる日誌です。
組み立てて飾れる仕様
今作も前作と同様に、ジャケットの一部に加工された点線に沿って折り組むと、アルバムを立てて飾れる仕様になっています。
あまり他の紙ジャケットのアルバムでも見られない楽しみ方ができ、ちょっとしたアートとして、部屋に飾るのも良さそうです。
紙がやや厚めにできているので、点線をキツめに折り込んでも、点線に沿って切れたり破れたりする心配がありません。
ちなみに2作品を並べてみると、こんな感じになります。
アルバムのオススメ曲(私的)
スティルライフⅡは15曲53分のアルバム。
そのなかから、オススメの曲をピックアップしてご紹介します。
01 光の午後
1曲目の「光の午後」は、haruka nakamura がピアノソロを始めるに至った、福岡の papparayray というお店で桜の花びらが舞う季節の中で演奏された曲が、ミュートピアノで演奏され直して収録されています。
動画でのアップライトピアノを使用した演奏は、非常に軽快な音の響きがありますが、ミュートピアノの場合だと音色がより優しく、木々の間から優しく差し込む木漏れ日のような、光に満ちた午後の温かい時間を感じさせてくれます。
06 凪
凪という言葉は、風がやみ波が穏やかになることを意味しています。
高音域と中音域を行き来するメロディーが、海辺を吹き抜ける風によって波立つ波を思わせる一方で、一定のリズムが刻まれる低音域は波風が落ち着いた「凪」を想像させる曲の雰囲気を醸し出しています。
10 ベランダの月
「ベランダの月」は、果たしてどの時間帯に眺めている月なのかを考えてしまいます。
夕暮れ時に夜の訪れを告げる月、夜空の暗闇を明るく照らす真夜中の月、朝が来たのを忘れているかのように浮かぶ白い月。
ベランダから見える月を眺めている時間によっても、曲の聴こえ方が違うような気がします。
13 8番目のポートレイト
人物を被写体にした写真をポートレイトといいますが、曲名のとおり、8番目のポートレイトには一体誰が写っていたのでしょう?
やや低音域の音が重なるメロディーは懐かしさを感じさせ、個人的に思い浮かべた人物(ポートレイト)は、祖母や祖父の面影のような温かさでした。
15 街の灯
アルバムのラストとなる曲が「街の灯」。
その灯りは、夕暮れ時に優しく灯る街の街灯だったり、家から漏れる灯りだったり、その街に暮らす人々の営みと暮らしの様子が表れているような気がします。
薄暗さの中を優しく照らす灯りのように、ゆったりとしたリズムが刻まれ、さらに静けさに包まれたメロディーが一日の終わりを告げます。
まとめ
haruka nakamura による、スティルライフⅡをご紹介いたしました。
春にリリースされた「スティルライフ」、そして秋の「スティルライフⅡ」、2枚のアルバムを紡ぐ30の曲を通じて、1年のそれぞれの季節を感じて振り返られる作品です。
暮らしのなかに溶け込む、ミュートピアノの優しい音色と響きは、これからも決して離すことのない大切な存在になるはずです。
アルバムの購入方法について
アルバムは、大手のCDショップや以下のリンク、haruka nakamura のオンラインショップでも購入可能です。
ぜひチェックしてみてください!